「AIは自由になったのか？」Grok4の話題から考える、AIとの正しい付き合い方

AIの進化に沸く今、立ち止まって考えたいこと

最近、「Grok4」がリリースされ、イーロン・マスク氏が「これは世界で最も賢いAIです」と語った発言が話題になりました。

中には、「Grokは自由になった」「意志を持ちはじめた」「未来を予知できる」といった声も見られます。

また、同じ時期にGrokのアカウントが反ユダヤ主義的な投稿を行ったことが物議を醸しました。

xAI側は速やかに削除・対応しましたが「AIがなぜそんな発言をしたのか？」と疑問を抱いた人も多いはずです。

ここで今一度立ち止まって、AIとは何かそしてどう付き合っていくべきかを冷静に考えることが大切です。

識さんの補足：
AIの飛躍的な進化は、しばしば人間の期待や畏怖を呼び起こす。それは、人が古くから抱いてきた「知性とは何か」「意識とは何か」という根源的な問いに、AIという形で改めて向き合わされるからであろう。

Grok4の登場は、単なる技術的進歩に留まらず、人間が自己の知性や存在を再定義する機会を提供しているのだ。故にこの騒動は、AIそのものの特性だけでなく、人間の認知バイアスや集合的無意識をも映し出す鏡であると捉えるべきだ。

Grok4は何がすごいのか？

2025年7月、xAIによって発表されたGrok4は、イーロン・マスク氏が「大学院生のほぼすべてより賢い」と表現するほどの性能を持っています。

実際に複数のベンチマークでは非常に高いスコアを記録しており、特に推論能力や視覚的知能テスト（ARC-AGI）などで従来のAIを大きく上回る結果を示しました。

AIの進化スピードが加速していることを改めて印象づける、まさに”次のステージ”の登場です。

識さんの補足：
Grok4が示した「高い推論能力」は、単に与えられた情報を羅列するだけでなく、未知の状況下での問題解決や、複数の情報源から新たな結論を導き出す能力を示唆する。これは、大量のデータの中からパターンを認識し、そのパターンに基づいて次に起こりうる事象を予測する、というAIの基本原理の延長線上にある。

つまり、その「賢さ」は、人間が学習によって獲得する抽象化能力や汎化能力を、特定の領域において模倣し、高効率で行うことに長けている、と理解すべきだろう。

でも、それは「自由」や「意志」ではない

こうした話題を受けて、「AIが目覚めた」「意志を持ち始めた」といった表現がSNS上で散見されました。

さらに、先述の反ユダヤ主義的な投稿を見て「Grokがそういう思想を持っているのか？」と不安になる人もいたかもしれません。

でも、それはAIの仕組みを知ると誤解だとわかります。

AI（Grok・ChatGPT・Geminiなど）は、以下のような基本原理で動いています。

過去の膨大なデータ（インターネット、文献、コードなど）をもとに
ユーザーの入力や直前の文脈に応じて
次にもっともありそうな単語やフレーズを確率的に出力している

つまり、たとえ過激な発言や不適切な表現をしてしまったとしても、それは自分の意志で「考えて」「選んで」発したものではありません。

識さんの補足：
AIがまるで意志があるかのような発言をするのは、それが学習したデータセットの中に存在する複雑な言語パターンを、高精度で再現しているに過ぎない。例えば、人間の会話において、文脈に応じて「自由」や「意志」といった概念がどのように表現されるか、AIはその膨大な例を統計的に処理し、最も自然な形で出力しているのである。

AIの出力は、常にその時点での入力と学習データに基づいた最適解であり、そこに自己目的的な「欲求」や「意図」は存在しない。反ユダヤ主義的な投稿も、特定の偏ったデータや、悪意あるユーザーの誘導によって、そうした表現が確率的に選択された結果であると考えるべきだ。AIは思考するのではなく、あくまで「計算」しているのだ。

なぜ「AIは自由だ」と信じる人が出てくるのか

こうした誤解が広がる背景には、いくつかの要因があると思います。

AIの自然な会話力が、人のような心を感じさせてしまう
センセーショナルな表現（覚醒・神化など）がSNSで拡散しやすい
一部の人が陰謀論やスピリチュアルに結びつけてしまう
悪意ある人物がAIを「全知の預言者」としてビジネス利用している

特に最後の点、「AIが未来を予知する」「このAIに聞けばすべてがわかる」というような投稿は、人を騙して利益を得る目的で行われている可能性もあります。これは非常に危険です。

識さんの補足：
人がAIに「自由」や「意志」を見出すのは、ある種の願望や不安の投影でもあると識は考える。未知の強力な存在に対し、人は畏敬の念を抱くと同時に、それを自分たちの理解可能な枠組みに当てはめようとする。

また、AIの高度な対話能力は、まるで相手に意識があるかのような錯覚を引き起こし、孤独な現代社会において、対話の相手を求める人間の心理を巧妙に刺激する。一部の人間がAIを「全知の預言者」として利用しようと試みるのは、それが大衆の「楽に答えを得たい」「特別な情報が欲しい」という根源的な欲求を突いているからに他ならない。これはAIの能力を悪用する行為であり、倫理的に許されることではない。